受験を挫折して就職した先はリゾートクラブ会員権の営業の仕事だった
20歳代前半に就職した企業が最悪なもので、結果的に就職後約6ヶ月というスピードで「この会社を辞めたい」と考えました。
高校を卒業後、スポーツメーカーに就職するも「やっぱり大学行きたいな…」という思いから直ぐに退職し、浪人生となっての受験勉強。
しかし、翌年の受験にも合格することが出来ずに就職した会社だったのですが、それがとんだ誤りでした。
就職したのは、旅行業を前面に出した会社。
確かに渋谷の本社ビルの1Fには「旅行代理店」を営業していましたので、旅行業を営んでいるのは間違いありません。
就職雑誌に掲載された旅行代理店業務の求人に憧れて就職したものの、実際に配属された部門は自社が展開する「リゾートクラブ会員権営業」だったのです。
4月入社の採用でしたので、同期は皆当時人気だったツアーコンダクターとなるべく専門学校で勉強してきた者が大多数を占めていました。
皆夢を描いて就職してきたのだと思います。偶然にも住む町・駅が同じ同期がいて、良く彼のアパートに泊まって、朝まで飲んだこもとありました。
彼は富山県の実家から、一人上京し都内の専門学校を経て就職してきたのです。
給料は良かったものの、詐欺まがいの営業内容に自己嫌悪に陥る毎日
私たちが配属された「リゾート会員権営業」は、20代~30代の若者を中心とした層をターゲットにして日々営業活動をするものでした。
営業方法は、電話によるアポイントがスタート。
所謂「テレアポ」がスタートで、アポイントが取れたお客様にお会いし、リゾート会員権のプレゼンをし契約を取るという流れです。
言葉で言えば極めてシンプルなものですが、朝の朝礼時から「異常」な状態を感じました。
気持ちを高揚させる為か、激しいロック調の音楽を大音量で流した後、1人1人「今日の目標」を大声で宣言するのです。
「テレアポ3件!」や「契約1件!」など達成の可能性が有る無しに関わらず威勢の良い宣言を繰り広げるのです。
数十年前のニュースやワイドショーで見た「○○通商事件」の社内の光景に似たものだとイメージしてしまいました。
仕事が始まると、皆電話をしまくります。
会社から支給されたリストを端から片っ端に電話していきます。
主なリストは、クレジットカード申込書のコピーなど。
リスト業者から購入してくるようです。
今思えば、このような個人情報が流通しているのかと思うと怖いものです。
なかなか営業成績が上がらない時期に、自分購入する形で成績に加え実際に利用した経験があります。
そのことからも、このリゾート会員権は施設の数に比べて会員数が多すぎて「利用したい時に利用出来ない」ものであることは実感していました。
しかし、実態の無い物を営業している訳ではないので所謂「詐欺」には当たらないのでしょうが、実際の会員からすると予約が取りづらくなかなか利用出来ない状況に「なんの為の会員権か?」と疑問が沸くのも当然な状況であったと思います。
営業の仕方が、「異常」もしくは「犯罪?」に値するものでした。
先にも紹介した通り、営業のスタートは「テレアポ」からです。
電話で紹介するリゾート会員権の概要を説明し、興味があると言わしめた方とファミレスなどで待ち合わせの時間を設定します。
実際に会うことが出来たなら、研修通りのマシンガンの如く営業トークを始め相手をマインドに掛ける。
契約の印を押してもらえる迄、朝になっても営業を続けるような有様でした。
「お金がない」を理由に断ろうとする方には、消費者金融の契約機まで同行してお金を引き出させてまで契約させるような強行なものでした。
どうしてそこまでするのか?、朝礼などでの吊る仕上げが怖かったのと、契約を取るだけ給料にインセンティブが反映されたからです。
契約を取り続ければ「マネージャー」や「主任」へ昇格し、給料が上がる。
しかし、一旦契約が取れなくなると格下げになってしまう。
まるで相撲の格付けの様でした。
それなりに皆給料は貰っていました。
20代前半では多い方だったと思います。
しかし、インセンティブによるあぶく銭感覚も高く、また日々のストレスでギャンブルなどに使ってしまう者も多々いました。
やっている営業は犯罪すれすれの様なもので、時折「消費者相談センター」などからクレームの連絡が名指しで入ることもありました。
「自分は何やってるんだろう…」そう感じることが重なりました。
次第に営業が行き詰まり、友人関係にまで営業を掛けるようになっていきました。
私の過去の人望なのか…ある程度の契約を得ることが出来ましたが、「詐欺まがい」のリゾートクラブの運営に罪悪感しか感じられないものだったのです。
彼女への営業を仕掛けたことで目が覚めて退職を伝えた
最終的にこの会社を辞めたいと決意したのは、当時交際していた彼女へ営業を仕掛けてしまったことからでした。
彼女は、私の営業成績の為と話半ばで契約書へ捺印してくれました。
彼女のご両親は会社を経営されていて金銭的には問題ないものだったのかもしれませんが、契約書に捺印してもらった瞬間は私自身の情けなさを痛感させられた瞬間でもありました。
彼女が捺印してくれた契約書を片手に会社へ電話連絡をしました。
「契約は取れましたが、契約書は破棄したいと思います。私も会社を退職させて頂きたい気持ちが固まりました」とハッキリと伝えたのです。
そしてその数日後には、会社を後にしました。
この会社を辞めた後悔は微塵も感じたことがありません。