お客様のお金を増やすぞと希望を持って入った大手証券会社
新卒入社で大手証券会社へ入社しました。
私が通っていた大学は歴史も浅く、学部も少ない小さな大学でしたので、この大手証券会社に入ったのは私が創立以来始めての学生でした。
当然学校側は喜び、当時の学校会報などにもインタビューが載ったりしました。
私自身もすこし浮かれていたところが有り、実際に入社してからは学校側の期待を裏切らないように一生懸命、お客様の資産を増やして良い仕事をしようと意気込んでいました。
そして入社してからはまず研修の日々。
早く顧客を獲得して資産運用のお手伝いがしたいと思っていましたが、有価証券を売るためには証券外務員という資格が必要なため、その資格取得にまず時間を費やされました。
ようやく資格試験に合格すると、いよいよ新規顧客を獲得するための営業周りです。
新人の営業周りは過酷なもので、富裕層が住んでいる地域にポイントを絞って一軒一軒ピンポンを押して回ります。
幸い大手のブランド名によって怪しまれるということは少なかったのですが、富裕層はどこもすでに証券会社とお付き合いがあり、一件も新規顧客を獲得できない日々が続きました。
ようやく数件のお客様とお取引が始まった頃から、事務所の一人として成績換算の頭数に入ることになりました。
主に投資信託の販売目標が一人頭いくらというように分配されるのですが、その一人分を達成できない時は部署に在籍している他の社員が達成できない社員の分も販売しなければなりません。
私はまだ自分で持っている顧客も少なく、提案しても断られることがほどんどでしたので、当然その一人分の目標数字には届かず、いつも先輩方の成績に甘えてしまっているという状況でした。
追い詰められ、お客様のためにならない投資を勧めてしまった
そのような状況でしたので居心地が悪い日々が続いていました。
そうしているうちに経済状況の変動から、私がお勧めした投資信託の値段がどんどん下がってきてしまっているお客様が出てきました。
折しも新興国の高利回り債権や、リートと呼ばれる不動産投資を中心とした投資信託が流行っていた時代です。
それらのトレンドも終わりに近づいてきていたのだと思いますが、その損失が出ている状態の投資信託を売却して、売ったお金で成績を求められている新設の投資信託へ乗り換える提案をするようになってしまったのです。
本来投資というのは、資産運用のプロでなければ個人投資家は長期投資が基本です。
時間を味方につけて長い視点での投資を提案しなければいけないのですが、目先の成績に追われてあろう事かどんどん乗り換えを進めてしまったのです。
当然乗り換えには手数料がかかります。
証券会社は主にその手数料で儲けていますから、お客様にとっては乗り換えはそれだけで損失になります。
いけないことだと分かってはいたのですが、日々の成績の悪さと、職場の居心地の悪さでそうせざるを得ない状況に追い込まれていたのです。
リーマンショックが決定打!経済情勢が悪化し自分の仕事の仕方を後悔
自分の仕事の内容に疑問を抱えつつ、それでもなんとか毎日を過ごしていましたが、ついに決定的なことが起こりました。
2008年に起こったあの有名なリーマンショックです。
投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻したことを受けてアメリカでは銀行がどんどん潰れてしまい、日本株はもちろん世界株すべてに影響が出た世界的金融危機です。
当然、世界のお金の流れは安全な資金へと流れ、当時販売していた高リスクな投資信託は軒並み価値が下がり、お客様の資産は大幅に目減りしてしまいました。
そうなると、損失が出たから売って次の商品に乗り換えましょうという手法は、さすがに通じなくなります。
リスクを伴う有価証券は基本的にお客様がリスクを同意した上で購入するという前提で契約しますので、あからさまに「お前が悪い!」と責め立てるお客様はいませんでしたが、これは信用をなくしたなと覚悟しました。
経済情勢は誰にも先は読めませんが、少なくとも今まで販売してきた手法が結果的にお客様のためになっていなかったことに、その時とても後悔しました。
お客様の役に立てる仕事を求めて損保会社のコールセンターへ転職
そんなことがあって、すでに自分には投資の先見もなく本当にお客様のためになる提案もできないのであれば、転職をしようと考え始めました。
幸いにして大手証券会社という誰もが名前を知っている会社でしたので、転職先もすぐに見つかってトントン拍子で採用が決まりました。
次の仕事に選んだのは損保会社の交通事故コールセンターです。
事故にあわれたお客様に安心してその後の対応を任せていただけるよう交渉の窓口に立つ仕事ですが、初めての事故で不安に思われているお客様に対して迅速で適切なアドバイスをすることによって感謝されることが多い仕事です。
もちろん対応不備でクレームになることもありますが、お客様の身近な存在となって役に立ちたいという証券会社時代から持っていた気持ちを発揮できる仕事にようやくつけた想いです。
給料は下がりましたし辛いこともありますが、今では転職して本当に良かったと思っています。
コメント